GIGAスクール構想でGAFAへ対抗できるか!?

文科省が補正予算で、一人1台の情報端末を配備するために学校向けの情報教育の強化に取り組むようです。予算額は2,318億円とのこと。小中高校へ一人1台の端末配備だけでなく、無線LANの配備もあります。

Windowsパソコンだけでなく、タブレットやChrome OSも配備する端末の対象となっています。パソコンとタブレットは用途が異なるので学校毎の事情を考慮しているようです。

学習用のソフトウェアも対象となるようです。期間は2022年度末までを予定想定しています。「安価な教育用端末市場を構築」するとも記載があります。

でも問題は維持の方です。SE目線で見て問題になりそうなところをまとめたいと思います。

学校でのPC利用イメージ

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何を目指すか

内閣府が提唱している「Society5.0の中で生きている子供たち」へICT環境を構築するとあります。そもそもSociety5.0は次のようになります。

Society 5.0 のイメージ
内閣府 Society 5.0説明サイトより

今あるICTをうまく活用できた時に訪れる夢のような社会です。100%上手くいくわけではないと思いますが、目指すべき理想は網羅されています。

短期目標

まずは教育用端末の配備、無線を含むネットワーク環境の構築、ソフトウェアの充実により、ICTを活用した課題解決ができる環境を構築します。

校内LANの配備状況によってはLTEを使っても良いとありますので、一人一台の端末配備は絶対に目指したいものと考えられます。

中長期目標

GAFAに対抗できる国際競争力を持つようにすることと思います。昭和の時代は物造りで成功しましたが、今後はソフトウェアが主流となります。

ICT教育環境を強化して、ICTを使いこなせるようになると、新しいビジネスを開拓できると考えていると思いますが、企業しやすい社会と転職しやすい環境を用意する必要はあると思います。

環境整備だけでは片手落ち

PC、タブレット、スマホや無線LAN環境を配備しますが、SEから見ると後々の問題がいくつか考えられます。

GIGAスクールネットワーク構想はハードウェアやソフトウェアの準備は十分にできていると思います。

では準備した後の世話はどう考えているのでしょうか。その世話は決して楽なものではありません。

ICT環境を世話できる教員や事務員が学校内に居るのかもわかりません。

他にも維持費用は必要です。それについて細かく説明します。

ICT環境を提供するハードウェア

【課題1】ICTを教える教員のスキルアップ

教員は国語、算数、英語、理科、社会などの強化を教える専門です。ICTについてのスキルは教員個人に依存しているため、教員のレベルにまで達していません。教えることは専門ですが、そのためのベースとなるICTの知識は少ない人も多いのではないでしょうか。そもそもICTの知識を持っているか調べてすらいないはずです。教員試験に必要ではなかったはずですから。

教員にいきなりICTの知識を付けて「教えるようになれ」と言っても実現は難しいと思います。ICTを使いこなせるように教員向けの研修が必要です。個人差もありますので、生徒に教えられるレベルに引き上げるのは時間が必要ですし、忙しい教員の方にICTの勉強の時間を取ってもらうも難しいかもしれません。

【課題2】ライセンスなどの費用負担

次に費用負担です。導入までは自治体の補助でできたとしても、その後発生するライセンス費やソフトウェア利用料、端末の保守料など、必要となります。

この費用は受益者負担で考えると、生徒が負担となるはずです。そうなると学校の授業料が上がります。ここを保護者に説明して受け入れてもらう必要があります。昨今労働者の給与が上がらない点を考慮すると相当な負担だと思います。

【課題3】セキュリティ

最後にICT環境のセキュリティです。セキュリティは情報を安全に保護する仕組みのことを言います。セキュリティを維持して情報を安全に保管し続けるには、構築するICTの知識ではなく、セキュリティに特化したICTの知識が必要です。

教員は生徒に教えることが仕事です。セキュリティの維持は主の仕事ではありませんが、セキュリティを疎かにすると、情報資産を狙うクラッカー(悪意を持ってハッキングすること)から狙われると生徒の個人情報や成績などの重要な情報が漏洩したり、パソコンなどが使えない事態となります。

ですので、構築したICT環境のセキュリティを維持するには専門業者に委託するために費用が必要となります。そのためセキュリティ維持費用も授業料に加算され保護者が負担する必要があります。

GAFAに対抗するために

今考えられるだけで先般の3つの課題はありますが、GIGAスクールネットワーク構想を実施する計画には評価できます。今後他にも課題は出てくると思いますが、生徒が新しい発想で大人の想定を超えるようなアイデアを出してほしいです。

新しい斬新なアイデアが出てくるようになればGAFAに対応していくことは難しくないと思います。第二次世界大戦後から復活した日本の国民性があるため、追いかけるのは得意ですからね。

日本の国際競争力を強化するには

今後は成功体験が無い中、まずはGAFAを追いかけ、追い越す勢いでICT教育環境を整備し、生徒の新しいアイデアを生かせるような環境づくりが必要です。我々大人は生徒や子供たちの新しいアイデアを頭ごなしに否定せず、真摯に受け止めビジネス化する支援体制が必要ではないでしょうか。

働き方改革は結構ですが、新しいアイデアを受け入れ、リスクを取って実現に向けて進むことが今の日本には大事ではないでしょうか。

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